随生庵のブログ

和の美が好きなので、「わび数寄常住」の思いをつらつらと。

いのちの道

人ははじめから人であるのではない。
人は母の胎内で
魚になり、蜥蜴になり、鳥になり、鼠になり、猿になりして
人として生まれ出るのである。
この星の上に降り注いだ水の中に
微かに生まれうごめき始めた太古の命が
数十億年かけて、少しずつ少しずつ進めていった生命の道を
私たちは必ず通っている。
母の胎外では一年にも満たない時間の経過だが
その胎内での時は、四十億年の砂時計が
静かにではあるがたしかに流れ落ちるのである。
私はまちがいなくミジンコのような原生動物であったし
まちがいなく海をおよぐ魚でもあった。
私はまちがいなく
血のめぐりが透いて見えるネズミの赤ちゃんであったし
ほんの1.23%が足りないときには猿でもあった。
深い深い眠りから目覚めた今朝
私は、光の届かない海の底から
ゆっくりと浮上していく
小さな魚であった自分の記憶を思い出した。